法務省|法務大臣閣議後記者会見の概要【令和6年9月3日(火)】

 今朝の閣議ですが、法務省請議案件はありませんでした。
 続いて私から3件、御報告させていただきたいと思います。
 1件目は、いわゆるオウム真理教と同一性を有する「Aleph」に対する再発防止処分の決定についてです。
 公安審査委員会は、「Aleph」に対する再発防止処分について、公安調査庁長官から請求を受け、厳正かつ慎重な審査を行った結果、昨日9月2日月曜日、四度目となる再発防止処分を行う旨の決定を行いました。
 これによって、当該団体は、9月21日土曜日から6か月間、この団体が所有又は管理する特定の土地又は建物の全部又は一部を使用すること、また金品その他の財産上の利益の贈与を受けることが禁止されます。
 今回の決定では、前回の決定と比べて、一部の使用禁止がなされている建物の一つについて、使用禁止範囲が拡張されるという措置も含まれています。
 この団体「Aleph」は、いわゆる地下鉄サリン事件を始めとする未曾有のテロ事件の首謀者である麻原彰晃こと松本智津夫の絶対的な影響力の下で活動するなど、今もなお、無差別大量殺人行為に及ぶ危険性を有していると判断しております。
 公安調査庁において、引き続き、再発防止処分の実効性の確保を図りつつ、観察処分を適正かつ厳格に実施して、当該団体の活動実態の把握に努めるとともに、公共の安全を確保し、国民の皆様方の不安感の解消・緩和に寄与してまいりたいと思います。
 2件目は、先月30日金曜日のバエトフ・キルギス法務大臣との会談についてです。
 昨年の11月に来日され、その時にMOCを締結いたしました。
 それから数えること10か月、この1年の間に2度目の来日です。大変熱意を感ずるところでして、昨年11月に署名・交換した協力覚書(MOC)に基づいて、具体的な協力案件の実施についての意見交換も行いました。
 ロシア、中東、そしてアジアを結ぶ地政学的な要衝ですので、中央アジアに位置するこのキルギスは、非常に重要な国であるというふうに我々も思っています。司法外交の展開の点でも重要なパートナーであると思います。
 今後は、今回の会談内容を踏まえて、法務総合研究所国際協力部(ICD)において、法務省との間で共同研究する具体的な協力案件をしっかり詰めて、一層のきずなを深めたいと思います。
 また、別の角度ですけれども、キルギスはGDPの30%を出稼ぎで稼いでるわけです。主にロシアに出稼ぎに行って、ロシアもああいう状態ですので、安定的に若い人材が生かせる場所を求めているという状況もあります。
 日本も育成就労制度を作って、外国人材を受け入れようという体制を整えておりますので、キルギスからも是非、日本に若い方々を送り出してくださいという話も、大臣との間で行いました。
 3件目ですが、9月2日にバヤルサイハン駐日モンゴル大使と懇談する機会を得ました。
 これもやはり、技能実習制度、特定技能制度などを活用して、若い人を送り出し、また戻ってきてもらい、日本からも大勢の人に来てもらえる人的交流を、強く求めておられました。
 法案改正についてもしっかりとフォローしていただいているようでして、それを生かして、もっと深い相互・双方の御理解と協力をしっかり進めていこうということで、大変有意義な懇談ができたというふうに思います。

新年度予算の概算要求公表に関する質疑について

【記者】
 新年度の概算要求についてなんですけれども、先日、新年度予算の概算要求の件、公表されましたが、大臣として特にその重視されている予算って何でしょうか。重点項目1「安全・安心な国民生活の実現」で保護観察所の観察官について134人の増員を求めていらっしゃいますけれども、増員の狙いを改めてお聞かせいただきたいのと、この134人という人数にした理由をお聞かせください。

【大臣】
 先日も申し上げましたが、法務行政は非常に様々な行政需要というものに直面しています。これがボリュームとしても大きくなっているし、内容としても複雑化して、質の高い法務行政というものも求められている。質・量ともに前へ進む時に法制度と予算の大きな変更が必要になるわけですが、法制度については昨年、今年と入管法改正等を行ってまいりました。
 その間、予算要求もしっかりやってきましたが、今年度、来年度、再来年度にかけては、今度は本格的に予算の確保が非常に重要な課題で、その中のこれが重点ですとはなかなか言えない、全部重点なんですよね。
 厳しい財政事情のもと、概算要求基準のもとでメリハリをつけながらも、目一杯要求しているという状況ですので、全部が重点事項という意気込みで取り組んでいきたいというふうに思っています。
 ただ、その中でも指摘があったように、個々に見ていきますと一例ですが、保護観察所の観察官については、134名の増員を求めています。
 これはやはり、今年の痛ましい事件がありましたので、それを踏まえて、保護観察官による直接処遇を実施する期間を設けて、必要な情報収集及び重点的な処遇といったものを実施することによって保護観察機能を強化し、ひいては、保護司の方々の負担を軽減し、不安も軽減するための増員要求です。
 この134名の理由ですが、これは、保護観察付全部執行猶予者の保護観察に当たって、開始後の一定期間、保護観察官による直接処遇を実施することを可能にするための体制整備に必要な人員を、各庁ごとの規模や事件数等も踏まえて積み上げるような形で試算し、この人数をどうしても必要とするという算出を行った上で要求しております。何とか実現できればいいと思います。

関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺に関する質疑について

【記者】
 関東大震災後の朝鮮人の虐殺についての質問なんですけれども、1日に関東大震災から101年になりました。震災後に起きた朝鮮人虐殺についての大臣の御認識を伺いたいと思います。現在も震災の度に様々なデマが出回る状況ですけれども、この101年前の出来事から、何か教訓とすべきことがあるかどうか、御見解をお伺いしたいと思います。
 この件については、昨年のこの時期の記者会見で質問があって、大臣から、「事実関係を把握することのできる記録は見当たらない」っていうお答えいただいていますけれども、私もこの間、色々な民間の研究、読んできたんですけれども、法務省の前身組織である司法省が震災後に作成した「震災後二於ケル刑事事犯及之二関聯スル事項調査書」この文書にその立件された事案が記載されているようなんですけれども、こうしたその司法省の調査書も、この「事実関係を把握することができる記録」に当たらないという御見解なのかどうか含めて、お答えいただきたいと思います。

【大臣】
 改めて申し上げるまでもないことですが、特定の民族や国籍の方々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、また、そういった動機で行われる暴力・犯罪、これはいかなる社会においても決して許されない、そのように考えております。
 法務省では、ヘイトスピーチについて、SNSでの発信等を通じた啓発活動、人権相談、また人権侵犯事件の調査・処理を通じて被害の救済を図るよう、全力を尽くしているところでもあります。
 特に、震災等の大きな災害の発生時、不確かな情報に基づいて、他人を不当に扱ったり、それに乗じて偏見・差別を助長するような情報を発信するということは、重大な人権侵害になり得るだけではなくて、避難や復旧・復興の妨げにもなりかねない、非常に重大な反社会的行為だと思うんですよね。
 災害発生時には、こうした行動を厳に慎むとともに、それぞれが正しい情報と冷静な判断に基づいて行動することが重要であり、法務省は繰り返し呼びかけを行っています。人権擁護局公式SNSを通じて、こうした呼びかけを繰り返し行い、また、状況も注視して、必要な是正措置にも万全を尽くしているところです。
 今御指摘がありました、その調査書ですね、「震災後二於ケル刑事事犯及之二関聯スル事項調査書」と題する文書の写しが、国会図書館に所蔵されているということは、承知しております。
 ただ、法務大臣として、当省の保管文書でもなく、国会図書館に所蔵されている何らかの資料の写しを評価するというのは大変困難なことでして、直近でも8月30日に官房長官が記者会見でお話をされていますけれども、政府全体としてのスタンスです。国会質問、あるいは質問主意書に対してお答えしているとおり、調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないという認識には変わりがありません。そのことも御理解いただきたいと思います。

(以上)



出典:法務省 Webサイト
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00539.html