厚生労働省|第7回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和6年10月10日(木)10:00~

場所

経済産業省別館11階1111号会議室(東京都千代田区霞が関1-3-1)

議題

(1)中間とりまとめについて

(2)その他

議事

議事内容

○辻川中央労働衛生専門官 定刻になりましたので、これより「第7回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催いたします。本日は、御多忙のところ、御参集いただき誠にありがとうございます。報道関係者の皆様にお願いがございます。カメラ撮りはここまでとしていただきますようお願いいたします。
 本日の出欠状況についてです。新垣構成員、江口構成員、松本構成員が御欠席です。大下構成員については、代理で清田様がオンラインにて御参加されております。砂押構成員、三柴構成員、矢内構成員、渡辺構成員がオンラインでの御参加です。
 オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の仕方を説明させていただきます。会議中、御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の指名を受けてからマイクのミュートを解除し、御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度ミュートにしていただきますようお願いいたします。
 続いて、資料の確認を行います。本日の資料は、議事次第、資料1「中間とりまとめ案」、資料2「第1回~第6回検討会における主な意見及び論点案」、参考資料「関連条文及び指針等」となっております。不足がございましたら、事務局にお申し出ください。
 それでは、以降の議事進行については、川上座長にお願いいたします。
○川上座長 ありがとうございます。それでは、これより議事に入りたいと思います。議事次第にあります議題(1)中間とりまとめについてということで、御審議をお願いしたいと思います。本日は、事務局のほうで、これまでの先生方の御議論を踏まえて、「中間とりまとめ案」として御準備いただいておりますので、まず内容を確認いただくことにしたいと思います。それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 事務局の富賀見です。では、お手元の資料1のファイルをお開きください。中間とりまとめ案について御説明させていただきます。まず、1ページ、Ⅰの「はじめに」は、今日は割愛させていただいて、2ページからが、本検討会におけるこれまでの検討内容となっており、Ⅱの「ストレスチェック制度等メンタルヘルス対策の強化に向けた検討」です。構成としては、前回検討会の資料で、事務局からピックアップして御紹介させていただきましたが、これまでの論点及びまとめの内容がベースとなっており、さらに、前回頂いた御意見をそれに反映して取りまとめています。なお、これまでの論点、ないし前回頂いた御意見は、本日のファイルの資料2のほうになりますので、適宜御参照ください。
 では、説明を始めます。まず、算用数字の1番の「ストレスチェック制度の効果検証」です。ストレスチェック制度の効果について、学術論文や研究報告書等をもとに検証を行いました。ストレスチェックの実施に加え、その結果の集団分析及び職場環境改善の取組により、労働者の心理的ストレス反応の改善等が見られた。3ページです。ストレスチェックの実施だけでも、約7割の労働者から「ストレスチェックの個人結果をもらったこと」を有効とする回答が得られた。また、医師面接を受けた労働者の過半数から、「医師面接(対面)を受けたこと」を有効とする回答が得られた。
 ストレスチェック制度について、ストレスチェック及び面接指導の実施により、自身のストレスの状況への気付きを与える効果や、個々のストレスを低減させる効果が確認されたが、他のメンタルヘルス対策も含め、引き続き、効果検証を行っていくことが重要である。なお書きとして、検討会で御紹介いただいた世界保健機関(WHO)により出版された「職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」においても、職場における組織的な介入(ストレスチェック制度が該当)により、職場の心理社会的要因によるリスクの低減を図ることが推奨されている、とさせていただいています。
 2の「50人未満の事業場におけるストレスチェック」です。「(1)今後のあり方についての検討」として、これは検討の経過ですが、4ページ以降です。1 労働者のプライバシー保護、5ページの2 医師の面接指導の事後措置、3 50人未満の事業場に即した実施内容、7ページの4 実施コスト、5 地産保等による支援、その他50人未満の事業場に対する支援策と、各論点について議論を重ねてきた経過を具体的に記載しています。
 これらのとりまとめを8ページ以降に、「(2)今後の方向性」として記載させていただいていますので、御説明いたします。ストレスチェック及び面接指導の実施により、自身のストレスの状況への気付きを得る機会は、全ての労働者に与えられることが望ましく、個々の労働者のストレスを低減させること、職場におけるストレスの要因そのものを低減させることなど、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することの重要性は、事業場規模に関わらないものである。ストレスチェックの実施については、平成26年の制度創設当時、労働者のプライバシー保護等の懸念により、50人未満の事業場において当分の間努力義務とされているが、現時点において、ストレスチェックを実施する場合の労働者のプライバシー保護については、外部機関の活用等により、対応可能な環境は一定程度整備されていると考えられることから、ストレスチェックの実施義務対象を50人未満の全ての事業場に拡大することが適当である。
 ただし、50人未満の事業場においては、産業医がおらず適切な情報管理等が困難な場合もあるので、原則として、ストレスチェックの実施は労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することが推奨される。また、50人未満の事業場には、現在の50人以上の事業場における実施内容を一律に求めることは困難なことから、50人未満の事業場に即した現実的で実効性のある実施内容を求めていく必要があるとして、まず、衛生委員会等の設置義務がない50人未満の事業場においては、労働者が安心してストレスチェックを受検できるように、関係労働者の意見を聴く機会を活用することが適当である。また、ストレスチェックの実施結果の監督署への報告義務は、一般健診と同様に、50人未満の事業場については、負担軽減の観点から課さないことが適当である。これらのほか、50人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法についてマニュアルを作成し、周知を徹底することを前提とする。特に、10人未満等の小規模な事業場については、その実情を考慮した取り組み可能な実施内容を示す必要がある。
 また、ストレスチェックの実施を外部委託することが多くなると、一方で外部機関のサービスの内容及び費用の設定は様々であるので、その適切性が一層問われることとなる。このため、外部機関に委託する場合のサービスの質を担保することが重要であり、50人未満の事業場が、委託する外部機関を適切に選定できるようにしていく必要があることから、厚生労働省が「ストレスチェック制度実施マニュアル」で示している「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト」について、50人未満の事業場が活用できるように内容を見直し、周知していく必要がある。
 地産保においては、50人未満の事業場に対して、登録産業医・保健師等による産業保健支援サービスを無料で提供しており、高ストレス者の面接指導について、登録産業医により対応している。ストレスチェックの義務対象を50人未満の事業場に拡大する場合、面接指導の対象者が大幅に増えることが予想される。円滑な施行に資するよう、登録産業医等の充実など、地産保で高ストレス者の面接指導に対応するための体制強化を図ることが不可欠である。
 また、面接指導以外の相談を選択する高ストレス者等への対応についても、地産保の体制強化や「こころの耳」の相談窓口の充実を図っていく必要がある。
 最後に、これらの支援体制の整備、支援を含めた制度の周知、その上での50人未満の事業場における実施体制の整備に要する期間を確保するため、十分な準備期間の設定を行うことが適当である。このように整理しております。
 続いて、3番の「集団分析・職場環境改善」です。同様に、(1)は「今後のあり方についての検討」として、検討の経過について具体的に記載しています。12ページまで飛んでいただいて、これらのまとめとして、「(2)今後の方向性」として記載していますので、御説明いたします。
 まず、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善を義務化することの是非については、義務化すべきとする意見も一定程度見受けられたが、他方、現在の事業場における取組の実態として、職場環境改善の実施状況は50人以上の事業場で約5割、10人以上50人未満の事業場で2割弱にとどまり、大企業であっても試行錯誤しながら取り組んでいるところ、ストレスチェックの集団分析結果も含め活用する情報や実施体制・実施方法などの取組内容も極めて多様であること等を踏まえると、現時点では、何を、どの水準まで実施したことをもって、履行されたと判断することは難しく、事業場の規模に関わらず義務化することは時期尚早であり、義務化については引き続きの検討課題としつつ、まずは適切な取組の普及を図るべきである。
 なお、集団分析だけ義務化することは可能かという点については、実態として、集団分析だけ実施する場合には、管理職が神経をとがらせたりするなど、むしろマイナスが生じることもあることから集団分析だけをやればいいと誤解されないように、一体的な制度であることをしっかり示すべきという指摘もあり、現時点では、集団分析だけ義務化するという判断はできない。
 また、集団分析については、現行の努力義務の規定を、労働者のプライバシー保護等の観点から、個人を特定できない方法で実施する努力義務規定とすることが適当である。
 国は、ストレスチェック制度について、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止する一次予防の効果が得られるものであり、集団分析及び職場環境改善まで含めた一体的な制度であることを、事業者や労働者に対して明確に伝えることができるような方策を検討し、関係者の理解を図っていくべきである。また、ストレスチェック制度が、メンタルヘルス不調の未然防止だけではなく、労働者のストレス状況の改善及び働きやすい職場環境の実現を通じて生産性向上にもつながるものであることに留意し、事業経営の一環として、積極的に制度活用を進めるよう、事業者に働きかけていくべきである。
 また、第14次労働災害防止計画では、労働者の協力を得て、事業者が取り組むこととして、「ストレスチェック結果をもとに集団分析を行い、その集団分析を活用した職場環境の改善まで行うことで、メンタルヘルス不調の予防を強化する。」とされています。これを踏まえ、集団分析及び職場環境改善の具体的な実施の促進に向けて、ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善の取組事例の収集・とりまとめを行い、その上で、取組事例を含めた制度の周知啓発について、国、事業者、労働者、医療関係者において今後も計画的かつ確実に進めていくべきである。併せて、ストレスチェック制度関係者に対する研修を充実していくべきである、このように整理しております。以上、かいつまんでの説明になりましたが、中間とりまとめ案とさせていただきます。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、構成員の皆様から、ただいまの御説明について御意見を頂きたいと思いますが、その前に、本日、御欠席の松本構成員からコメントを頂いておりますので、事務局から御紹介いただけますか。
○辻川中央労働衛生専門官 事務局より紹介させていただきます。「中間とりまとめ案については、これまでの議論についてまとめていただいており、本会として、ストレスチェックの実施義務対象を50人未満の事業場に拡大する方向性に賛同いたします。それに伴い、全体の支援体制を強化できるよう、次の点も含めていただきたく意見を提出いたします。」まず、50人未満の事業場におけるストレスチェックについてです。7ページの5 地産保等による支援、その他50人未満の事業場に対する支援策についての意見です。「地産保における体制強化のため、産業医、保健師等の専門職の活用について明記を頂くとともに、地域産業保健センターへの保健師等の配置、増員や、保健師等が適切に関わるような体制の強化について改めて御検討いただきたいと考えております。」
 続いて、集団分析・職場環境改善についてです。12ページの(2)今後の方向性についての意見です。「中間とりまとめ案では、特に国、事業者、労働者、医療関係者に対して、制度の周知啓発だけが計画されていますが、研修や体制整備など、目的に応じた工程表を描き、広く事業場で集団分析や職場環境改善が取り組めるような具体策についての記載が必要ではないかと考えております。また、組織内において、保健師等が適切に関わる体制の強化についても御検討いただきたいと考えております。」以上です。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、御参加の構成員から御意見を頂きたいと思います。本日は、特に内容で区切らず、案の全体について御議論いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。御意見のある方は、挙手の上、お願いいたしたいと思います。それでは、坂下構成員、茂松構成員の順でお願いしたいと思います。失礼いたしました。それから、山脇構成員の順でいきたいと思います。
○坂下構成員 ありがとうございます。中間とりまとめ案の内容について、全体的にこれまでの議論が反映されており、違和感はございません。従業員数50人未満の事業場におけるストレスチェックに関して、前回、義務化に慎重な御意見もあったところ、今回、義務化するということであるならば、従業員数50人未満の事業場向けの実施マニュアルの作成、周知、支援体制の整備、好事例の展開、マニュアル作成後の十分な準備期間の確保といった対応が重要になると考えておりますので、その点について十分な手当をお願いしたいと思っております。
 続いて、集団分析・職場環境改善に関して、1つ気になっている点がありますので、確認させていただきたいと思います。報告書案の13ページの下から4行目に、「その上で、取組事例を含めた制度の周知啓発について…今後も計画的かつ確実に進めていくべき」という記載があります。これまでの検討会の議論を踏まえますと、今後求められる対応としては、集団分析と職場環境改善の義務化ではなく、企業が積極的にメンタルヘルス対策に取り組むことの意義やメリット、好事例、取組に当たって必要となる留意事項などをしっかりと周知して理解促進を図っていくことだと認識しています。制度の周知の主体は、あくまでも政府が責任を持って対応するものと考えておりますが、もちろん経済界としてもできる限り協力していく所存です。
 その上で、過去の検討会における発言内容を確認しますと、例えば「周知啓発を政府、使用者、労働者、医療関係者が具体的にどう進めていくのか、工程表のようなものを示してほしい」といったような御発言もありましたが、検討会のコンセンサスは、将来の義務化というゴールを設定して、その達成に向けてタイムラインを引いて計画的に対応していくということではないという旨を明確にしておきたいと思います。
 集団分析・職場環境改善については、これまでも再三にわたり述べてきましたが、大手企業であっても正に試行錯誤しながら取り組んでいるというのが実態です。それぞれの職場に応じて真に効果のあるメンタルヘルス対策が進むためにも、引き続き現場における取組の実態等を踏まえ、義務化については慎重に検討していくべきものだと考えています。したがって、報告書の13ページの下から4行目の文章は義務化やその検討時期を前提とした記載ではないと理解しておりますので、この点を明確にしておきたいと思います。
 もちろん、将来の義務化の可能性まで否定するものではありませんが、今回の検討結果としては、これまでの議論のとおり、まずは適切な取組の普及を図っていくということが重要だと思います。
○川上座長 ありがとうございます。事務局から何か、この点について、今はございませんか。では、意見として承っておきたいと思います。茂松構成員、お願いいたします。
○茂松構成員 日本医師会の茂松でございます。今回、中間とりまとめ案の御提示をどうもありがとうございました。このとりまとめ案の中で重要と思われる点について、発言させていただきます。まず1つ目ですが、50人未満の事業場に即した実施内容です。6ページにありますように、今後作成されるマニュアルでは、労働者のプライバシー保護の観点と、人間関係に対する配慮がポイントとして掲げられております。小規模事業場のストレスチェックでは、労働者のプライバシー保護と、社内の人間関係の配慮の難しさが特に大きいと思われますし、この点の配慮というのをマニュアルの中に記載していただきますよう、よろしくお願いしたいと思います。
 2つ目の実施コストについてです。7ページの所に外部機関の費用について書かれておりますが、資金的に余裕のない小規模事業場では、費用面が大きな壁となっております。7ページにも書かれておりますように、地産保においては、50人未満の事業所に対して、登録産業医・保健師等による産業保健支援サービスを無料で提供しており、地産保における面接指導が無料で行われております。まずは、地産保の活用を強調して周知していただく必要があろうかと思います。
 また、50人未満の事業場でも、ストレスチェックが義務化されますと、多くの外部機関が参入してくると予想されます。この外部機関はサービスの内容、費用の設定が様々ですので、その適切性が一層問われることになります。そのために、「外部機関にストレスチェック及び面接指導の実施を委託する場合のチェックリスト」について、50人未満の事業場が活用できるよう内容を見直すことは必須であると考えております。厚生労働省におかれましても、外部機関に委託する場合のサービスの質の担保をしっかりしていただくことを強く求めたいと思います。
 最後に3つ目です。地産保の体制強化です。これまで地産保の充実は、検討会の中でも訴えてまいりましたが、ストレスチェックの実施義務対象を50人未満の事業場に拡大する場合、地産保で無料で行う面接指導の対象者が大幅に増加して混乱することが予想されます。現在、登録産業医の確保が難しい中で、多くの産業医に登録していただくためには、登録産業医にインセンティブを与え、モチベーションのアップを図る必要があろうかと思います。円滑な施行ができますよう、地産保には利用者の増加に対応できるように、十分な予算を付けていただき、登録産業医を充実させていただくことを重ねてお願い申し上げます。もし、お分かりでしたら、この時点で予算の増額について、どのように厚労省はお考えなのかということが分かれば、教えていただければと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。課長、よろしくお願いいたします。
○佐々木労働衛生課長 労働衛生課長でございます。地産保の体制充実のための予算確保について、御質問を頂きました。正直、現時点で予算関係について、予断を持ってお答えすることはできませんが、今お話がありましたように、50人未満の事業場におけるストレスチェックの円滑な施行に向けては、登録産業医による面接指導の体制強化について、事務局側としてもしっかり検討してまいりたいと考えております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。続いて、山脇構成員、お願いしたいと思います。それから、オンラインの清田代理人にもお願いしたいと思います。
○山脇構成員 連合の山脇です。まずもって、この間の議論を丁寧に取りまとめいただいた事務局の皆様に、改めて御礼を申し上げたいと思います。本日示されている中間とりまとめ案については、前回、検討会で示された考え方を中心に構成されており、大きな異論はありません。その上で、私からは、集団分析・職場環境改善に関して、第6回での検討の議論結果を踏まえ、3点ほど検討をお願いしたいと思います。
 まず1点目は、資料12ページの今後の方向性の1つ目のポツの後ろから3行目、「義務化は引き続きの検討課題」とされている点についてです。これは、前回の検討会において、平成26年検討会の構成員でもあった渡辺構成員から、集団分析・環境改善について次のような発言がありました。「本来の制度趣旨から見ると、集団分析・職場環境改善は当然義務化すべきであるが、今の時点で義務化すると、企業が混乱する可能性が高いので、猶予期間を設けて準備しましょう。この間に、好事例その他をしっかりマニュアルに記載し、準備して数年後には集団分析・職場環境改善が義務化できるようにしましょうというのが前回の検討会の結論だった。今日の話を聞いていると、前回検討会と全く同じだ。7年前から全然進んでいないことになってしまう。私としては非常に忸怩たる思いがある」との発言です。私はこの言葉を大変重く受け止めました。
 この御発言を受け、改めて平成26年報告書を読み直しました。集団分析・職場環境改善に関して、「国は集団分析手法の普及を図るとともに、その普及状況などを把握し、労働安全衛生法の見直しに合わせて、改めて義務化について検討することが適当」とされております。確かに、今回の検討会の中でも義務化について検討されたのは事実だと思いますが、今回、事務局から示されております「義務化は引き続きの検討課題」という記載は、前回の検討会の報告書での「労働安全衛生法の見直しに合わせて改めて義務化について検討する」という表現よりは弱まっているのではないかと思います。改めて前回の渡辺構成員の発言の重みを踏まえ、表現について御検討いただけないかという点が1点目です。
 2点目は、今回、努力義務とする意味合いについて、平成26年報告書には、次のような記載があります。「努力義務としている趣旨は、集団分析の実施の必要性や緊急性が低いことを意味するものではなく、事業者は、職場のストレスの状況、その他の職場環境の状況から、改善の必要性が認められる場合には集団分析を実施し、その結果を踏まえた必要な対応を行うことが自ずと求められることに留意しなければならない。」この考え方自体は、今日的に不変であると承知していますし、御異論がある先生方はいらっしゃらないと思いますので、改めて、このことを報告書に記載し、集団分析等の自発的な拡大というものにつながるように周知を図っていくべきではないかと思います。
 3点目は、先ほど坂下構成員から御発言が、また、松本構成員から意見書で表明があった点です。私は今でも義務化に向けてロードマップを作っていくべきだと考えています。そういう意味では、坂下構成員とは意見が反対です。ここは明確化を図らないというのが現段階では妥当ではないかと思っています。
 ただ、なんらかロードマップを作成するということは、前回、私が発言し、松本構成員からも同様の趣旨の意見がありました。今回も改めて松本構成員からも発言があったということも踏まえ、義務化と必ずしも結び付けない中でロードマップを作るということについては、報告書に記載いただけないかと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。労働衛生課長、お願いいたします。
○佐々木労働衛生課長 労働衛生課長の佐々木です。御意見をいろいろありがとうございます。山脇構成員より頂いた平成26年の報告書を引っ張りながらの今回の報告書への反映ということですが、特に職場環境改善の位置付け、集団分析から引き続いてのというところで、縷々御指摘を頂いたと思っております。我々としては、平成26年の報告書の内容は所与のものと思っており、それを基に今回、この検討会で改めて御議論いただいたと承知しており、そういう意味では、今回しっかり御議論いただいて積み重ねたものを中間とりまとめに整理させていただいているものと承知しております。
 そうした上で、渡辺構成員の前回の検討会の御発言を引用されましたが、叱咤激励を頂いたという点で、我々事務方も渡辺構成員の御発言を尊重したいと思っております。ただ、職場環境改善が全く進んでいないとかということではなくて、ある程度進んでいるということは、中間とりまとめの中でもデータをもって提示させていただいておりますし、そこは普及啓発を含めて不断の努力を続けていく必要があると考えております。大企業でも悩みながら取り組まれているということも、いろいろ引き続き把握させていただきながら、良い事例、あるいは、トラブルになりそうな事例を用いて普及啓発しており、併せて、必要な研修というのを産業スタッフ等に対して実施していくということを考えていきたいと思っております。
 集団分析・職場環境改善に係る今後の方向性の最後のくだりの所については、それぞれに御議論があったと思っています。「工程表」という言葉は、私が申し上げるまでもないと思いますが、ゴールを設定して、期間も設定して、それに向かって何かを進めていくというのが一般的な理解ではないかと認識しております。そういう意味で、計画的かつ確実に進めていくべきであるという言葉をあえて用いらせていただいているところです。ここでは、集団分析等の周知啓発のことにしか触れておりませんので、その他の部分については、事務局側で検討したいと思っております。以上です。
○川上座長 佐々木労働衛生課長、ありがとうございました。それでは、オンラインの清田代理人、お願いいたします。
○清田代理人 ありがとうございます。日本商工会議所の清田でございます。大下の代理にて出席、発言させていただきます。まず、今回の中間とりまとめ案につきまして異論はございません。人手不足に悩む中小企業において、従業員のメンタルヘルス対策は喫緊かつ重要な課題と考えております。
 一方で、日商として、大下が再三申し上げてきましたとおり、これまでストレスチェック制度が実施されてきた大企業と中小企業、これでは環境や人的リソースに大きな隔たりがあること。またプライバシー確保の視点からも、現行の制度をそのまま適用拡大するということは困難であると、この認識は変わっておりません。
 ストレスチェック制度の目的というのは、一次予防にあると考えております。もちろん、医師の面接指導につなげること、さらには集団分析、職場改善につなげることができれば、それは望ましいことではありますが、50人未満の事業場への拡大に当たっては、まずは従業員に気付きを与えて、自己の振り返りの機会を与えることを重要視するべきだと考えております。
 各種リソースに乏しい中小企業の実態を念頭に置きながら、セルフチェック、セルフケアを中心としたシンプルで実効性のある仕組みづくりが求められると考えます。従業員10名以下のような、いわゆる小規模事業者においてもスムーズに運用できるような継続的、建設的な議論を今後、期待していきたいと思います。
 最後になりますが、現行制度において、ストレスチェック、面接指導につながる割合は低く、またメンタル不調の発生も増え続けている状況がございます。50人未満への適用拡大と平行して、この要因を分析し、より望ましいメンタルヘルス対策に向けて、何が必要かということについては、引き続き検討、議論が必要だと考えております。私からは以上でございます。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、オンラインで渡辺構成員、お願いいたします。
○渡辺構成員 渡辺でございます。中間とりまとめ、どうも御苦労さまでした。私のほうから3点お願いがあります。1つは、先ほどもお話が出ました、職場環境改善に関する提言が7年前と比べて変わっていないというところでございます。義務化をするということが職場環境改善につながらなければ意味がないわけですから、無理矢理義務化して、かえって職場環境が悪くなるというようなことも考えられる中での強引な義務化は、趣旨にも反しますので適当ではないと思っております。
 ただ、職場環境改善につなげていくということはとても重要なことでありますから、少しでも職場環境改善をしていこうというモチベーションアップになるような仕組みづくり、企業の方々が集団分析を職場環境改善につなげていく、そのモチベーションになるような仕組みづくりを考えていただきたいと思います。前回も話が出ていたと思いますが、労基署への報告の中で、集団分析の実施のみならず、その後の職場環境改善につなげたかどうかというようなことも報告書に記載できるようにして、職場環境改善につなげた企業においては、なにがしかのインセンティブがあるような、何かそういった職場環境改善を推進するような仕組みづくりを考えていただきたいと思っております。
 2つ目は、外部機関への委託が増えることが当然予測できるのでそのチェックリストの見直しが当然必要なのですが、前回もお話させていただきましたが、そのチェックリストが本当に守られているかどうか、その信ぴょう性の担保、それを確実にできる仕組みづくり、是非これもお願いしたいと思います。今の規定でも、例えば面接指導をする医者は誰で、実施者が誰であるということを、ストレスチェック制度の実施前に明確にするということになっていたと思いますが、その辺りが守られているか、その実施者が本当に実施者業務をするのか、名前が出ている医師が本当に面接指導するのかといったことが担保できるような仕組みづくりをお願いしたいと思っております。
 3つ目ですが、地産保の充実も本当に必要だと思っています。たくさんの人がストレスチェックを受けることになるわけですから、その中で面接指導を受ける人も増えるとすると、どのぐらいの人数の人が面接指導を受けることになるのかという、ある程度の予想や目標値を算出して、その上で、その人数に対応できる仕組みづくりを考えなければいけないと思います。
 この前もお話させていただきましたが、中小企業に勤められておられる方が大体3,000万人います。ストレスチェックで高ストレス者になる人が、その10%とすると300万人です。厚労省としては、高ストレス者の方のうちのどのぐらいが面接指導につながることを目標とされているのかをお聞きしたいと思います。300万人の人が、私は半分ぐらいの人が受けてほしいと言いましたが、そこまでいかなくても、例えば25%の人が受けるとしても75万人ということになります。では、75万人の人の面接指導ができる体制ということで考えていかないと、趣旨に沿った対応ができないのではないかと思っております。その辺りについてもお考えをお聞かせいただきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。最後の点について、事務局から何か補足していただくことはございますでしょうか。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 事務局の富賀見です。3点、今、先生からお話があったかと思います。1点目の、事業者に職場環境改善のモチベーションを持っていただくような仕組みづくり、例として監督署への報告様式に職場環境改善の実施の有無を付け加えることについてどうかという御意見もございました。この点については、やはりこの場での議論でもありましたが、努力義務であるものの職場環境改善として何をどこまでやれば履行したと言えるものがないという中で、罰則の対象となる監督署への報告として求めていくということは、慎重に検討しなければならない点かなと我々も考えておりまして、今のところ、これを例示的にでも報告書に記載することは少し難しいかなと思っております。
 なお、モチベーションになるような仕組みづくりという点においては、今回の報告書でもその観点から頂いた御意見を、事業経営の中で積極的に取り組んでいっていただけるように人材確保や生産性向上などにもつながり得るものであるといった観点を強調して周知していく、また、一体的な制度として見えるようにマニュアル等で示して周知していくなど、そういった対応を工夫して取り組んでいきたいと考えております。その検討の際には、また御意見を頂戴したいと思います。
 2点目のチェックリストですが、本当にそれが守られているか担保できるような仕組みづくりが重要という御意見がありました。正に、先生のおっしゃるように、表面的なチェックにとどまらないようにということだと思います。今後、チェックリストを整備するために、また検討の場を設けて進めてまいりますので、その場において、どのようなチェック項目や確認する仕組みを作っていけば、その信ぴょう性も含め実態を適切に担保できるかという点について、そのような現場の実態をよくご存じの有識者の方々に御意見を賜りながら、実効性のある仕組みを作ってまいりたいと思います。
 3点目の面接指導に関してですが、今後の対応につきましては、また我々のほうで精査をしてしっかり検討してまいりたいと思います。加えて、高ストレス者のうち面接指導につながる割合が、どれぐらいが理想と考えているのかという点につきましてもご指摘がありました。全体のうち面接指導につながった者の割合は、現状では、この検討会の場でも共有しましたが、令和3年度に行った委託事業での実態調査の報告書では約1.5%、監督署への報告を基にした調査では約0.5%といった数字になっており、それが今の実態ではありますが、もともと何パーセントが理想というように設定されている制度設計ではありません。まず、上位10%程度を高ストレス者として判定するという運用上のラインを引いて、そのうちの面接指導につながった人数ですので、高ストレス者のうち何%かはともかく、本当に面接指導を受けるべき、また必要な医療につなげるべき者を面接指導につないでいくことが重要であると考えています。この高ストレス者の選定基準等について現在、研究が進められており、データも今後取りまとめられてくると思いますので、そういったものを見ながら、どれだけが本来の面接指導につなぐべき割合であるのかという点も含めて、また考えていきたいと思います。以上です。
○川上座長 事務局、御意見ありがとうございました。続きまして、オンラインの矢内構成員、お願いできますか。
○矢内構成員 矢内です。中間とりまとめ案について、全体的に合意をしております。渡辺委員の意見と重複しますが、集団分析と職場改善の対応についての意見です。
 一次予防を目的とした制度で、最終的には職場の改善活動が有効に機能することが非常に重要なポイントと考えております。そういった中で、義務化だけが先に進むというか、言葉が一人歩きしてしまうと、現場でやることありきのような運用になる点を懸念しております。やることありきではなくて、特に職場改善活動では、その中身や質とが非常に大事になってくると思いますので、そこを整えていくことに今後、力を入れていただきたいと思っております。実際に職場改善、集団分析をやられているのが報告的には8割を超えているということですが、中身にはばらつきがあると思いますので、その企業に合ったやり方ができるような形で、いろいろな事例が共有されると良いと考えております。
 また、ストレスチェック項目の見直しの話がありましたが、集団分析の指標部分も併せて検討いただきたいです。20年以上前のデータ分析に基づいている指標かと思いますので、この間の働き方や、企業を取り巻く環境の変化によっても対象者の反応が変わってきていると思いますので、集団分析指標も見直す項目に挙げていただきたいと思っております。特に現場では、事業所の規模や職種によって、差が出ることや、職種によっては仕事のコントロール感が持ちにくい職種もあり、評価やその説明をするのにすごく苦慮するケースもあります。そういった点から一律の指標ではなく、もう少し細かく分ける指標なども提案したいと思います。
 また、今後の検討の中では、ストレスチェック以外のメンタルヘルス対策に関しても、継続的に検討できるよう取り組んでいただきたいと考えております。私からは以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、及川構成員、お願いいたします。
○及川構成員 中央会の及川です。中間とりまとめ案の中に「家族的経営の事業場」の文言を入れていただきましてありがとうございます。この家族的経営の事業場につきましては、家族によるケアが行われております。長年、御夫婦で飲食店を営んでいる事業者とか、あるいは一次産業の仕事がもうしんどくなって、高齢の御夫婦で漬物業を営んでいる事業者とか、家族的な経営をしている小規模事業者にまで、国がストレスチェックの実施義務を課すことについては、極めて慎重に対応すべきだと考えております。
 飲食業界や運輸業界など、事業法で規制されている小規模事業者などには、必ずしもストレスチェックに限定せずに、多様なメンタルヘルスの不調を一次的に予防する方法を模索されてもよろしいのではないかと考えております。事業別に各業界団体などの実態をヒアリングしていただくという柔軟な制度設計をお願い申し上げます。
 また、マニュアルにおいて示すべきポイントにつきましては、中小企業の立場から、中小企業の、より良い経営改善につながるインセンティブになるような実施の仕方についてお示しいただきたいと思っております。また、御検討をよろしくお願い申上げます。以上です。
○川上座長 御意見をありがとうございました。先に、オンラインの三柴構成員に御発言いただいて、それから黒木構成員にお願いしたいと思います。
○三柴構成員 ありがとうございます。まず、報告書ですが、これだけコンパクトに、非常にバランスの取れた報告書に整理された事務局の御尽力に敬意を表したいと思います。その上で、ある意味では今日の議論の方向性を枠付けるような意見を差し上げたいと思います。
 「生きた法」という言葉があるのですが、正にこの制度は、その発想が必要なものだろうと思います。つまり、ただ制度を回しても余り意味がなくて、この制度自体が、データなどの量よりも質を重視するものだろうと思います。
 スポーツ選手でも3割バッターだったら一流と言いますが、特に零細規模の事業においては組織の強み、また労働者においてもその強みを積極的に評価していく、一点豪華主義で運用する事業も多いわけですので、あら探しよりは、強みを活かし、伸ばしていく、そこは労働者も恐らく同じだろうと思います。ですので、チェックリストの実質化というお話もありましたが、できている所を加重的に評価していくという発想が必要ではないかと思います。
 そのためにもマッチングが必要で、零細だと、なかなか人自体が採れないという問題はよく承知していますが、縷々申し上げたように、個人と組織の価値観や能力のすり合わせが必要かなと思います。そのためにも、特に経営者団体等におかれては、今後の制度の実質化を図るためにも、企業規模を問わずに、人事労務管理の基本の建て直しについては御再考いただきたいし、また揉め事に学ぶ姿勢もお持ちいただきたいと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、黒木構成員、お願いいたします。
○黒木構成員 まず、中間とりまとめ案、本当に御苦労さまでした。先ほど渡辺構成員、それから矢内構成員がお話された集団分析のことに関してですが、この集団分析は、以前から言っていますように、やはり業種、職種、事業所の単位、それから規模で、それぞれストレスの内容が全然違います。そして、今の集団分析は、上司の支援、同僚の支援、それから裁量権と、いわゆる仕事量の変化と、こういった形で2つから分析をしています。これはあくまでも非常に単純な面から見ているだけで、そこから何が分かるのかということは、非常にまだ疑問を感じています。
 したがって、このストレスをどう考えるのかということに関しては、ある程度、事業場の内容、事業規模、そしてその事業主がこれに対してどう取り組んでいくのか。つまり、いわゆるストレスチェックの実施責任者、それから衛生委員会、これがタイアップしてストレスチェック責任者へ上げて、そして全体的に取り組んでいくという視点がやはり必要だろうと思います。
 それから、労働基準監督署への報告をしているかどうかのチェックですが、これに関しても、何をもって職場環境改善をしたのかということが非常に抽象的になってしまう可能性があります。衛生委員会に対して、それからリーダー研修で、いわゆるグループ分けでチェックをして、検討をする。それで、なかなかその後が進まないとか、また人事面が絡んでくるということもあり、なかなか進まない。そういう場合に、職場環境改善の有無というところを、ある程度明確化した上で、そのチェックを入れるかどうかということを検討していただきたいと思います。
 それから、ストレスチェックを実施した後に、高ストレス者が1割、そして医師面接にどうつなぐかと。これも、今のストレスチェック制度は手挙げ方式です。高ストレス者は、自ら医師面接を受けたいという場合に医師面接を受けるということになっているので、これでは、なかなか医師面接にまで進めていく頻度が上がらないと私は思います。
 なぜかというと、いろいろな事業所で実際に実施者としてずっと関わってきて、そして最初の頃は手を挙げる人が非常に多かったのですが、段々、年ごとに少なくなっていくというのが現状だと思うのです。そして、ストレスを把握している、いわゆる上司や管理監督者がどう絡んでいくかによって、強引にやるのはもちろんいけないと思いますが、医師面接制度をいかに利用できるかというところに繋がっていく場合もありうるので、こういったところも医師面接の頻度を上げるために、ある程度検討をしなければいけないのではないかと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。黒木先生の意見については、マニュアルなどについて、もう少し拡充していただきたいということだと理解いたしました。では、先に高野構成員、それから井上構成員でお願いいたします。
○高野構成員 日精診の高野です。よろしくお願いいたします。まず、多彩な内容をまとめていただき誠にありがとうございました。全体的に大きな異議はございませんが。前回も少し申し上げたことと重なる意見にはなると思うのですが。まず、特に50人未満の部分についてです。前回もお話しましたが、労働基準監督年報などでいろいろ細かく読み込むと、やはり10人未満の労働者は、全労働者の大体20%弱ぐらいいます。あと、企業数でも全事業所の70%ぐらいということで、非常に多いということが分かります。しかも、労働安全衛生調査の対象外でもありますので、本当に未知の領域に踏み込むという、かなり強い意識を持って取り組んでいく必要があるのかと感じております。
 例えば、今後の方針のほうにも書いてありましたが、具体的には、実情を考慮して、マニュアルも柔軟であることが必要であるかなと。余りガチガチにしてもいけないし、余り考えさせるようにすると、かなり負担が掛かってしまうのかなと、そこら辺のバランスを工夫する必要があるのかと思います。その辺は、しっかりと時間をかけて作っていかなければいけないのだろうと思っております。
 それから、50人未満の義務化後のことも書いてあり、監督署への報告義務は課さない方針、これは負担をかけないということで納得しておりますが、実際に義務化した後に、どういうふうに実態を把握していくのかという、そういう考え方、方法についても考えていく必要があるかなと思います。
 それから、少し細かくなりますが、ストレスチェックの調査票については、実際に作られることに大分時間が経っていることと、そのまま小規模事業所に使えるのかということです。最近、個人事業主向けのものも公表されていますが、この機会に、その辺の調査票の改修も検討してはどうかなと思いました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。事務局から何かございますか。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 1点だけ、高野先生の御指摘にありました、今後、50人未満に広げていくときに、おっしゃるとおり、確かに労働安全衛生調査の統計調査でも、50人未満の実態として、10人未満の所は調査対象から除かれている領域になります。監督署への報告義務をかけないということで、では、どういった実態把握の方法でということですが、把握の方法としては、令和3年度に行った委託事業での実態調査では、10人未満も対象にして取っております。労働安全衛生調査で10人未満も対象にするというのは多分、困難であろうかと思いますが、50人未満に適用された場合には、やはりしっかり、そういった10人未満の小規模の事業場でも、どのように取組が普及しているかという実態については、我々としても検討して、方法を見付けて把握していきたいと思います。また、その際には御知見を頂戴できればと思います。以上です。
○川上座長 補足、ありがとうございました。それでは、井上構成員、お願いいたします。
○井上構成員 ありがとうございます。日本精神神経学会の井上です。中間とりまとめ案を非常に分かりやすくまとめていただき、どうもありがとうございました。私のほうからは、地産保に関する話と、事業者の役割やインセンティブについて少しコメントさせていただければと思います。
 まず、地産保の件につきましては、体制実現の御理解を頂き、7ページなどにも反映していただきまして本当にありがとうございました。今後、ストレスチェックが中小企業に広まっていくに当たり、先ほどからコストの問題が出てきておりますが、やはりEAPなどは当然有料ですし、地産保は無料ということになってきた場合、どうしてもコストに敏感な中小企業におきましては、やはり地産保に流れていく可能性が極めて高いと思っております。ただ、一方で地産保にいるいろいろな担当者が、特に中小企業に詳しいかというと、そういうわけではないと思いますので、そういう地産保の体制充実について御理解と記載をいただきましたことに御礼を申し上げるとともに、是非そのような実の伴った体制充実をお願いできれば有り難いと思っております。
 もう1点は、今もお話しましたが、地産保やEAPなどの外部機関が組織で有効に働くというときには、大企業、中小企業に関わらず、やはり事業者の認識というものがすごく大事かと思っております。これにつきましては、事業者の顔がもっと見えるような形にしていくべきではないかというコメントが渡辺構成員のほうからも以前にあったかと思います。大企業でも、事業者というものは顔が見えてほしいと思いますし、中小企業はストレスがより多様だということを黒木委員が先ほどおっしゃいましたが、やはりその多様性に対して、中小企業の事業者がきっちりと対応する気になる状況作り、そういうことが必要になってくるかと思います。
 あくまで、これは頭に浮かんだことで恐縮ですが、例えば健康経営というものがいろいろと広まっていく過程で、健康経営の銘柄になるためにどのようにするかということで、かなり体制が充実したように私は思っております。そういう意味では、大企業にしろ中小企業にしろ、事業者の方が前向きにこのストレスチェック制度に協力していただけるような、なんらかのインセンティブが取れるようなシステム作りを是非、お願いできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○川上座長 御意見ありがとうございました。森口構成員、お願いいたします。
○森口構成員 森口です。私は、労働衛生機関の所属でもありますが、京都府医師会で産業保健の担当理事をしておりますので、その立場から地産保のことを重ねてお願いしたいと思います。今、京都においては、京都市内は登録医師が結構充実した状況ですが、北部や南部などは、登録医師がかなり減っており、1人当たりの稼働が相当増えている状況があります。ですので、ここに示されたように、もし面接指導が増えてきますと、なかなか対応が難しく、非常に危機感を持っているところです。
 我々も呼びかけをしておりますが、冒頭、茂松構成員がおっしゃったように、やはりインセンティブがもう少し充実していかないと、強くお願いしづらいようなところがありますので是非、その点をお願いしたいと思っております。
 もう1つは、松本構成員等から御指摘があったように、保健師をはじめとする多職種を活用していくことも同時に図っていきたいと思っておりますので、その点においても、やはり地産保の予算が非常に重要だと思っております。その点を重ねてですが、お願いとして申し上げました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 山形の産業保健総合支援センター所長の神村です。今、森口構成員のお話にありましたように、産保センター、あるいは地産保の地方における現状を考えますと、本当に地産保の登録産業医が不足している現状に、非常に危機感を持っております。その中で、例えばこのメンタルヘルスの対応をする場合に、御相談を頂いた場合に、松本構成員からもありましたように、看護職、保健師の活用、あるいは心理職の活用、私どものほうでは、企業の人事労務の担当者の経験があるような方々も活用させていただいております。そのような様々な人材を活用していって、高ストレスで相談をしたいという方の中から、本当にメンタルヘルスのクリニック、診療に結び付けなければいけないということを選別、峻別していっていただかないと、実際には精神科のクリニックも、今は新規の予約が数か月待ちという所もあるぐらいで満杯の状態だと伺っております。
 産業医としても、急いで紹介したい、メンタルヘルスで、もうぼろぼろだという方を受け取っていただけないという危機感もあります。ですから、このような50人未満の小規模事業場のほうも更に義務化してメンタルヘルス、ストレスチェックを拡充していただくのは大変望むところではありますが、例えば高ストレスであれば、すぐにどこかに相談、あるいはクリニックに受診と、自らがそのまま足を運ぶ人が増えていて困っているということも聞こえております。高ストレスと言われただけで、その場で産業保健のほうの相談の枠組みをお使いにならないで、すぐにメンタルヘルスのクリニックに受診してしまうという方もそれなりに出ていて、そのようなことにならないような流れ、枠組み、あるいは国民的な理解を頂きたい。
 これまでのところ、ストレスチェックが、ある程度普及して7年たって、職場でのメンタルヘルスがとても大事だということを、かなりの人が認識していて、ストレスチェックという言葉も多くの人が分かっています、知っています。あれをやったことがある、あれを毎年やっているということも分かっています。ただ、それが職場の働きやすさに結び付けるのだというところまでは、皆さんになかなか理解が普及していないと考えますので、そのような理念の普及についても少しお考えいただければと思いました。
 それから、先に申し述べたような地産保、登録産業医の不足、そして最終的にはそれを受け取るクリニックの精神科医師の多忙、不足というところまで大きく動いてしまうということを少しお考えいただいて、このような制度を動かしていただければと思いました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。
○佐々木労働衛生課長 労働衛生課長です。ただいまの神村構成員、森口構成員から御指摘がありました地産保の体制の充実は、今回の制度の施行に伴い、やはりしっかり考えていかなければいけないと考えております。インセンティブについては、先ほどお答え申し上げましたように、現時点で特に予算ということでは予断を持ってお答えすることはできませんが、考えてまいりたいと思います。
 そうした上で、多職種連携ですが、あくまでも産業医、あるいは産業医の資格を有する医師を中心に保健師をはじめとする多職種連携を進めていくことは大変重要な観点だと思いますので、産保センターの研修などを、この辺りを認識して充実させていきたいと思っております。
 また、経営者、あるいは事業経営の一環として、しっかりと今回のことをとらまえていただくべきだという話は、これまでも複数の構成員からもいただいております。今回も、中間とりまとめの12ページの下から2つ目のポツの所で触れておりますが、これをしっかり浸透させることが、気付きを促していき、それが経営にも裨益するのだということで、これは行政のほうでも工夫して考えて、今後の普及啓発や産保センターにおける研修等に活用してまいりたいと思っております。以上です。
○川上座長 そのほかに構成員の皆様方から御意見はありますか。茂松構成員、お願いします。
○茂松構成員 日本医師会の茂松です。ただいま、高ストレス者と言われただけで精神科の先生を訪れる方々が多くなっているということですが、ここはやはり、かかりつけ医も受けていくのだろうと思っております。日本医師会としても、精神科の先生方と一緒に組んで、できるだけ研修会をしっかりして、普通のかかりつけ医でも少し受け入れて専門の先生につなげるような体制をしっかり地域でつくってまいりたいと考えております。ありがとうございます。
○川上座長 ありがとうございます。では、堤構成員、お願いいたします。
○堤構成員 まずは、とりまとめを本当に御苦労さまです。私は、職場環境改善については、できるだけ進めていく方向で、ドライブがかけられたらというように思うのですが。12ページの今後の方向性の一番最初に書かれています。先ほども少し話題に上がっておりましたが、何をどの水準まで実施したかをもって、履行されたか判断することは難しいということで、現場はやはり少し大変なのだろうという感じで考えております。矢内先生もおっしゃったように、大きな目的はきちんとした上で、こんなことでも効果が出るなり、このようなことをしていたら良い感じになったということをイメージができるようなことをお示しできるような感じの進め方が大切ではないかと思っているのが1つです。
 それから、職場環境改善を小規模事業場で行っていく場合の、いわゆるプライバシーのことが書き込まれていたように思います。匿名化した上でというような形です。これは、職場環境改善をする上でいえば、いわゆる大きな企業でも同じようなことではないかと認識しています。建て付け上は少し難しいかもしれませんが、職場の改善をする上でいえば、その方々の名前は必要なくて、本当に職場を改善するために自由な意見を出していただけるような形で、それを職場環境改善に結び付けられるような運用ができるといいと考えておりますので、発言をいたしました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。坂下構成員、お願いいたします。
○坂下構成員 改めて、この度、検討会の中間とりまとめをこのような形でまとめていただき、事務局の御尽力に感謝申し上げます。1回目、ないし2回目の検討会の場でも申し上げましたとおり、個人向けのストレスチェックをしっかりと実施して、ストレスに関する本人の気付きを促していただき、その上で、可能であれば集団分析も行い、その結果を職場環境改善に結び付けていくことが非常に重要だと思っています。
 難しいのは、職場環境改善を実務に落としていくと、どこまで実施すればよいのかということや、すぐに結果が出ないようなこと、長期的に見ていかなければ結果が出ないようなこともあるので、仮に義務化したときに、その義務を履行したかどうかの判断が非常に難しくなるでしょうし、何か形式的なもので義務を果たしたものと判断してしまうと、おそらく一番楽な行動に流れてしまいやすいと思います。職場環境改善はコストもかかるものですのでなおさらです。
 そうすると、この検討会でずっと議論してきたような、真に意味のあるストレスマネジメントにはつながらず、むしろ、矢内構成員もおっしゃっていたように、簡易な行動のほうに事業者が流れてしまって、一生懸命頑張っている取組に水を差すようなことにもなり兼ねないと思っております。大事なことは、先行してしっかりと対応されて、メンタルヘルス対策の結果を出されているような企業の事例を周知して、皆さんとシェアして、1つでも多くの企業、経営者の方が「自分たちの事業場でも実施してみよう」というような取組のモチベーションにつなげていくことだと思っております。
 その点について、経済界、特に経団連のような組織が果たす役割は大きいと思っております。特に、今回従業員数50人未満の中小企業にもストレスチェックの実施を義務化するということであれば、中小零細企業からの、どのように義務化に対応したらよいのかというような相談、問い合わせ、サポートのニーズがたくさんあると思いますので、地方経営者協会などとも連携しながら、経団連としてもできるだけのことはしていきたいと思っております。
 最後に、先ほど山脇委員から、集団分析・職場環境改善に関する計画的な周知啓発は、将来の義務化に向けたものであるか否か、あえてグレーにしておくことが妥当なのではないかというような御提案があったと理解しております。この点については、座長と事務局で検討されるのを待ちたいと思いますが、中間とりまとめは、これまでの検討会で、皆さんがいろいろな御意見を言われたものをまとめている文章なわけです。周知啓発に関して、計画的に、確実に実施していくというところについては、コンセンサスは得られていると思いますし、先ほども申し上げたとおり、周知啓発について、しっかりと企業としても対応していきたいと思っておりますが、義務化については、企業に対する重みが非常に大きいと思っております。いつまでに、この義務化を達成するというようなコンセンサスは、検討会において得られていないと思います。先ほど申し上げたとおり、特に職場環境改善に関しては、義務化すること自体がなかなか難しいテーマだと思っております。したがって、企業の今後の取組も含めて、しっかりと情報を収集して分析し、どのような内容であれば集団分析を義務化できるのかといった議論を尽くした上で考えていくことが重要だと思っております。
○川上座長 ありがとうございました。オンラインのほうはZoomが落ちていたようですが、大丈夫でしょうか。オンラインの構成員の先生方は、大体議論をフォローしていただいておりますか。
 かなり御意見を頂いておりますが、ほかにも構成員の先生方から御意見がありましたらお願いいたします。高野構成員、お願いいたします。
○高野構成員 日精診の高野です。先ほど茂松先生からもお話がありましたが、実際に高ストレス者が精神科医の医師面接指導を依頼されることも今後増えていく可能性があるかということで、意見です。現在の精神科の医療の95%ぐらいが外来で診療をしており、時間的に余裕が余りないというのが現状かと思います。
 以前、日精診の中に、産業メンタルヘルス管理委員会というものがあり、そこで私は担当理事を務めているのですが、ストレスチェックの義務化前に日精診の精神科医を対象に調査したことがありました。有効回答数は500人ぐらいでしたが、その中で産業医の資格を持っている精神科医が半数いました。結構多くの、外来を診ている精神科医が、産業医の資格を持っているということが分かりました。
 それから、産業医の資格を有する精神科医は、有さない精神科医よりも職場との連携を頻繁に行うという結果も出ました。もし今後、医師面接指導や、高ストレス者を中で診ていて紹介先というときには、その辺りの産業医の資格があるかどうかということや、以前も少し話しましたが、医師面接指導を行う可能性のある医師の研修の拡充がとても大事なのかと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。島津構成員、お願いいたします。
○島津構成員 島津です。中間とりまとめをありがとうございます。非常に分かりやすくまとめていただき、私も異論はなく賛同させていただいております。
 今の先生方から出ている御意見と大分重なりますが、全体として私もここに賛同いたします。中小企業に向けて、今回の義務化でストレスチェックが広がっていくことは、とても意義があるかと思っています。以前も少しお話をさせていただきましたが、普段私が産業保健の活動に関わっている中では、ストレスチェックの時期になったときに、もちろん高ストレス者としての面接もあるのですが、それとは別に、通常の健康相談の相談件数が、その時期に増えるということがあります。相談者に聞いてみると、ストレスチェックを受けてみて少し気になったとか、結果を見てみて気づきがあったということがあります。ストレスチェックを受けたことがきっかけで自分の健康を考えたり、気づきや相談につながったりということも考えられるので、ストレスチェックの中小企業への拡大はとても意義があると思っています。
 逆に言うと、中小企業にとっても、もし今後ストレスチェックを導入していくことになる場合に、ストレスチェックの実施ということだけではなくて、実施をすると健康相談も増えてくるのであれば、必然と、社員が困ったときにどこに相談したらいいのかという相談窓口を設置しなければいけなかったり、相談窓口を会社の中で周知をしなければならなかったり、自然と、ストレスチェックの実施をきっかけとして、メンタルヘルス体制の構築にもつながっていく、メンタルヘルスを考えるきっかけにもなるかと思います。ストレスチェックと、ほかのメンタルヘルス対策は切り離せないと思いますので、今回のストレスチェック導入をきっかけに、中小企業のメンタルヘルス対策を全体的に考えるようなきっかけにつながっていくといいということを、とても考えています。
 もう1つは、先ほどからお話が出ています地産保の拡充は、私も、是非進めていただきたいと考えております。登録産業医の先生のお話や、保健師、心理職、人事職も含めて、多職種というお話もありましたが、多職種で連携してメンタルヘルスの専門家も含めて、メンタルヘルス対策の促進員の方も設置していただいていると思うのですが、今後さらに拡充していただきたいと思います。あわせて、拡充するだけではなく、そういった方々が適切に支援を行っていけるような研修も含めて、今後も拡充して体制を整えていただけるといいと考えています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。そのほか、御意見を頂ける構成員はいらっしゃいますか。渡辺構成員、それから山脇構成員の順でお願いいたします。
○渡辺構成員 渡辺です。私からは、少し違う観点といいますか、次の観点になるかと思うのですが、非常に重要なポイントとして、地産保、あるいは対応する産業医の量の問題も重要なのですが、実は質というと誠に失礼なのですが、その辺りも非常に重要で、これからは研修も大事になってくると思います。
 というのは、どういうことかと申しますと、高ストレス者と言われているのですが、高ストレス者というのはどういう基準で選ばれているかといいますと、実は2つあります。1つは、本来の趣旨である職場ストレス因子、ストレス因子の高い人です。そしてもう1つ症状の強い人というのも基準になっているのです。これは、実は最初の在り方検討委員会でも問題になったのですが、本来の趣旨からいくと、本制度は一次予防の制度などでストレス因子の強い人が高ストレス者であり、症状の出ている人は一次予防ではないのではという意見もありました。しかし、症状の強い人を放っておくことはできないのでこれは職場の安全配慮義務の視点から副次的な対象として入れましょうということになり、症状の強い人というのも高ストレス者の中に入っているわけです。
 したがって、高ストレス者の中には、ストレス因子の強い人のみならず、症状の強い人が入っているので、その両方を面接指導しなければいけないということになるのです。症状の強い人も入っているということがあるために、面接指導は医師でなければならないということになっていると思います。
 したがって、面接指導をする医師は、症状の強い人に対して医療につなぐという二次予防の観点がもちろん必要なのですが、それだけでは十分ではなく、本来の一次予防的な視点、すなわち、本人から話を聞いてそれを職場環境改善につなげるという視点と、さらに本人のストレスマネジメント、あるいはストレスコーピング、レジリエンスを高めるというような視点、こういった一次予防の視点をもって面接指導に臨まなければいけないということになっております。
 ということを考えると、実は面接指導をする医者の責任は大きくて、また非常に高度なことが要求されることになってきます。ということで、茂松先生や医師会にも御尽力いただいて、面接指導をする医師の研修、二次予防のみならず、一次予防にも寄与できる面接指導ができることも今後は重要になっていくのではないかと考えております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 皆様方からご発言頂いているのと同様に、私もこれまで繰り返し述べてきましたが、今回制度を拡充するに当たっては、地産保、あるいは地域で実際に診療にあたる医師の力なしに対応することはできないと思います。是非、地産保の体制の拡充と必要な予算措置、地域医療の関係者に対する支援についても、厚労省には、必要な体制を構築していただきたいということを労働者の立場からもお願いしたいと思います。
 併せて、ロードマップの件について、繰り返しになりますが、やはり義務化も含め検討していくことが重要ではないかと思っています。仮に「義務化に向けて」ということを記載しないのであれば、同じ轍を繰り返さないために具体的に何ができるのかについて、厚労省、あるいは事業者の団体の皆様にも、御検討いただきたいと思います。労働者としても当然検討したいと考えます。
 この点は中間とりまとめには反映が難しいと思いますので、最終のとりまとめに向け、どこまで記載するのか、あるいは、本検討会の終了後に、具体化に向けた個別の検討会が立ち上がるとして、どのように検討を進めていくのかということも含め、引き続きの検討課題としていただきたいと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。種市構成員、お願いいたします。
○種市構成員 日本公認心理師協会の種市です。論点が前に戻ってしまって恐縮ですが、渡辺先生が先ほどおっしゃっていたことに続けてです。医師以外が、この制度に関わっていく際に、例えば心理職も含めてなのですが、個人に対しての相談対応というのがあります。もともと高ストレス者に対しては、本人が希望すれば医師面接を行うわけですが、本人が希望しない場合には産業医などと連携しつつ相談対応を行うというのが、心理職の対応の1つです。
 もう1つ、実は高ストレス者の選定において、補足的な面談を行うという仕組みも法律上は持っており、面談と相談と2つあるわけです。面談については、実際のところ、どのぐらい行われているかは今は分かりませんが、相談のことに関して言いますと、相談というのは、本人が例えば心理的な不調を訴えているということだけではなく、職場がどういう環境にあって、その職場に対してどのような負担を感じているのかという部分もしっかりと聞き取れなければいけないと考えると、心の健康に関してだけの専門家というよりも、職場のことも含めて、職場との関連性で、結果として精神の不調が生じているというようなストレスの要因と、結果としての心身の不調との関連性も含めて理解できるような専門家の育成が必要なのだろうと思います。
 その点で言うと、この相談対応を行うという部分については、今は、どうも医師面接を希望しない人の相談対応という形になっていて、位置付けとして、どうも副次的なというか、ない場合はこちらというような感じで、二番目的な扱いになっていると思うのです。今後、50人未満の事業所に対しても対象が広がると、労働者数としては1.5倍、つまり大体2,000万人と3,000万人以上という形で考えると、非常に多くの労働者に対して対応しなければいけないということで考えると、相談対応については、もっと有機的な意味があるのだということを強調してもいいのかと。それで、産業医と連携しながらやっていくことの意義があるのだということで相談対応の位置付けを強調していただけると有り難いと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。マニュアル等の工夫に反映するという御意見だと思いました。ほかには、いかがでしょうか。大体、御意見いただけるところは頂いたような感じでしょうか。ありがとうございます。
 まだ少し時間が早いですが、中間とりまとめ全体を御議論いただいて、非常に様々な御意見を頂いたと思います。ただ基本的には、この中間とりまとめを評価いただいていて、御了承いただいたものかと思っています。本日の御議論を踏まえていろいろな意見を頂いておりますので、事務局には、必要な修正を検討いただくようにお願いいたします。
 結果自体は、座長の私のほうで確認していくことで一任いただけると有り難いと思っておりますが、よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。それでは、そのようにいたします。事務局と相談をして、最終的なとりまとめをさせていただきます。
 以上で、本日の議題は全て終了いたしました。事務局から連絡事項等があれば、お願いいたします。
○辻川中央労働衛生専門官 事務局です。次回の検討会の日程などについては、改めて御連絡させていただければと思います。
○川上座長 それでは、本日の検討会を終了いたします。中間とりまとめの段階ではありますが、これまで、構成員の先生方には御尽力いただき、ありがとうございました。また引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。



出典:厚生労働省 Webサイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46942.html